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THE TOKYO BRANDvol.1 Uhr

注目のデビューブランド
「Uhr」デザイナー&ディレクター、
濱中鮎子さんに迫る

変わりゆくライフスタイルや体型などを意識したファッションの新しい価値観を提案するブランドが増え、買う側の気持ちに寄り添うTOKYO BRANDが増えている。そのデザイナーやディレクターに、ブランドの立ち上げストーリーやファッションへの愛を聞くこの連載。トップバッターは、2018春夏にデビューを飾った注目ブランド「Uhr(ウーア)」デザイナーの濱中鮎子さん。

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Uhrを着ることは、時を着ること

「BEAMS」プレス、「RAY BEAMS」ディレクターとして活躍したのち退職、フリーのPRとして活動していた濱中鮎子さんがこの春、新たなブランドを立ち上げた。Uhrとはドイツ語で「時間」を表す。シーズンコンセプトは設けずに、常に今、感じるものを形にし、着る人がそこに時を重ねていく服を作っていきたい、と語る。
「Uhrを着ることは時を着ること、と感じてもらえる服を作りたい。着るたびに思い出す景色があったり、時代を映し出したり。その人のクローゼットの中で、美しいヴィンテージへと変化していってくれたらうれしい」 Uhrの服は、体型や年齢を選ばないデザインになっている。着る人のそのときどきの年齢や体型に応じて長く着こなして欲しいからだ。「例えば、肩をあまり作らないようにしたり、紐でボリュームを調節したり。ハンガーではどんな服だか想像ができないようなものも多いですね。体を入れて初めて美しく完成する服なんです」。着丈を1サイズ違いで6㎝変えるなど、その人の身長に応じた「着たい丈」に出会えるよう工夫を施しているアイテムも多い。

自分らしい時間のなかで、
好きな人たちと、
自分が着たいものを作りたい。

前職ではPR職を経てディレクターとして「RBS」というブランドをゼロから立ち上げた経験ももつ。「コンセプト作りからロゴ、見せ方、売り方、何もかもゼロから作り上げた経験はかけがえのないもの。すごく楽しい日々でした」
 その経験が、濱中さんのクリエイティブ魂に火をつけてしまったのかもしれない。大きな会社だからこそできることの喜びと同時に、自分の思いだけでは動かせないジレンマも感じた。「自分で何かできないか。そんなことを思い始めたのが35歳の頃。結婚して、この先のライフステージの変化について考えたというきっかけもあります。とても忙しい毎日だったので、ずっと今のペースでたくさんのものを生み出し続けられるのか。一度立ち止まって、無理なく仕事をしていきたいと思い始めて、独立という考えが浮かんだんです。これから迎える40代の時間を、自分自身が着たいものを、信頼できるチームと一緒に、心地よいと感じるペースで生み出していけたら、本当に幸せだなと。それは大きな責任を伴う決断でしたが、30代後半に差し掛かり、今しかない!と」

着る人が緊張せずに心地よく過ごす時、
そこにUhrがあればうれしい。

撮影は表参道の「logi plants & flowers」にて。BEAMS時代からお世話になっているご夫婦で営むフローリストで、デザイナーの宇田陽子さん、ディレクターの岸大介さんとは家族ぐるみでのお付き合い。「この店の花や宇田さんのクリエイションに触れることが、新しい服づくりの刺激になります」。●港区南青山3-14-10 http://logi.jp.net (宇田さんのパンツ、濱中さんのドレスはUhrのもの)

インスピレーションが降ってくるようにデザインをするというタイプではない。たくさんの生地を目の前に並べて、触れながら「この生地でワンピースがあったらいいな」などとイマジネーションを膨らませる。「生地を肴にお酒が呑めるんです(笑)。この生地、すごくいい!なんて言いながら」。名古屋の大きな生地メーカーで数時間、すべての生地を見て選び抜いた数点のカットソーに、「ぶれてないねぇ」とメーカーの方に感心されたことも。軸となるアイテムのイメージが生まれたら、そこからおおよその型数を固めていくのだという。
現在スタッフは2名。それに加えて、手伝ってくれている友人のデザイナーと3人で回している。「急に大きな取引が増えることはあまり望んでいません。自分が目の届くなかで、自分と取引先様、そしてその先にいるお客様の顔が浮かぶ関係のなかで、ていねいに仕事をしたい。ひとつの契約も、結婚しましょう!っていうくらい真剣に結んでいるんです(笑)」
トレンドをどんどん生み出し、売れるものをバンバン作って、というのは、ちょっと疲れる、と濱中さん。「私が服と出会った頃は、地方に住んでいたこともあり、服は今みたいに安く手軽には手に入らなかった。だからこそ大切に選び、大切に着ていたような気もします。今再び、そんなふうに向き合える服を作れたらなと思うんです。トレンドとかブランドとかでなく、服が時間を貯めていき、ずっとクローゼットに入れておきたくなるような。Uhrがそんな存在になることが目標です」
「着る人には、できればそんなに緊張しない場面にUhrを連れて行ってほしい(笑)。心地よいムードのなかで、気負わずに自分らしいおしゃれをしている、そんなシーンにUhrが共にいたらうれしいですね」

濱中さんのクリエイティビティを刺激し、リラックスを運ぶ、大切な相棒たち。(写真集)ソール・ライター、ジョエル・メイロウィッツ、ピーター・リンドバーグの写真が昔から好きで、撮影の前のイメージづくりや、思考が固まった時に眺めている。(コスメ)ポジティブな気分を引き出してくれる赤リップは、大切な気合いスイッチ。特にNARSは深紅の印象的なカラーなのに全く落ちない頼もしい存在!(猫)ご主人と、7歳になる愛猫のチャイとともに暮らす。家で仕事をしていて煮詰まったら、チャイ坊をもしゃもしゃ撫でて癒してもらっている。

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  • ※掲載商品は定価表示となっております。

濱中 鮎子 Ayuko Hamanaka

1980年熊本県生まれ。明治大学経営学部を卒業後、ビームス入社。
店舗スタッフ、プレスを経て、レイビームスのディレクターを務め、オリジナルブランド「RBS」を立ち上げる。2016年秋に退職後、フリーのPRなどをしつつ、2018年春夏コレクションより自身がデザイナー&ディレクターとなるブランド「Uhr(ウーア)」をスタート。

photographer/ yOU
writer/ YURICO YOSHINO