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THE TOKYO BRANDvol.2 gren

旅を愛するジュエリーデザイナー、
「gren」山田みどりさんの日常

変わりゆくライフスタイルや体型などを意識したファッションの新しい価値観を提案するブランドが増え、買う側の気持ちに寄り添うTOKYO BRANDが増えている。そのデザイナーやディレクターに、ブランドの立ち上げストーリーやファッションへの愛を聞くこの連載。第2回でご紹介するのは、ヴィンテージ感溢れる味わい深いジュエリーを生み出し続けるブランド「gren(グリン)」デザイナーの山田みどりさん。

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幼い頃の一人遊びは、美しい石拾い

幼い頃、母のドレッサーの引き出しをこっそり開くと、こんなジュエリーが並んでいた気がする。あの時のドキドキや愛おしさを思い起こさせるような、独特の風合いと物語性をもつジュエリーを生み出しているのが、「gren」のデザイナー、山田みどりさんだ。
物心ついた頃から、道端に転がる石を拾い集めたり、新聞の折り込みチラシのジュエリーの写真を切り取ってノートに貼ったりと、石の輝きに魅せられた人生だったという。ファッションも好きで、迷いもなく大学も服飾ファッションの道に進んだ。アルバイトとして働いていたイタリアンレストランの常連だったのが、前職である「グレース」の社長ご夫婦。親しくなるにつれ自分のデッサンを見てもらう機会を得て、卒業後入社することに。「大好きなブランドだったし、自由にデザインさせてもらえただけでなく、素材の買い付けに商社などを通さず、自分で社長にプレゼンして買い付けに行くような社風で働けたことは、本当に豊かな経験になりましたね」と山田さんは振り返る。

買い付けの旅から、ジュエリーの物語が始まる

とはいえ、本来がアパレルブランド。工房の方とともに丹念にデザインを仕上げていても、ジュエリーは全体予算に応じて急遽型数が減らされることもあり、全てが思うように行くわけではない。自分の作りたいものを思う存分作りたくて、2007年、26歳で独立した。
山田さんは、デザインスケッチはほとんどしない。「紙に向かってデザインをすることがなくて。デザインの時期は素材を床じゅうに広げて、宝探しをするようにあっちに触れたりこっちに触れたり。1ヶ月くらい、アトリエにこもってそんな作業をしながらイメージを固めていって、最後の数日でぶわぁーっと形にする感じ。大切にしているのは仕上がりのニュアンス。墨入れをしたり、粗く仕上げたりして味わいを生み出します。このダメージの加減を職人さんに伝えるのが、結構難しい。アトリエには工具もリューター(切削工具)も揃っているから、絵を描くより見本を作っちゃうんです」
買い付けに行けば、気に入った素材はあるだけ全部買う。「ボタン300個とか、“本当に使うの?”って驚かれます(笑)。売れ残れば在庫を抱えることになるけれど、会社と違って誰に迷惑をかけるわけでもない。自分の大胆さの中で自由に泳げる、今のスタイルがとても気に入っているんです」。そもそも買い付けの旅そのものが自由で大胆。先日は妹とのタンザニアへのサファリ旅行が、買い付けの旅になった。「タンザニアといえばタンザナイトよね、と思い立ってドライバーに相談したところ、採掘業をしている親戚のところに連れて行ってくれたの。そこで切り出したままの5カラットの石を買い付けました(笑)。その後妹と別れて、私は当てずっぽうにエチオピアに行ったんですが、そこではなんとクレジットカードをスキミングされて! ツアー会社の方にお金を立て替えてもらって何とかオパールを買い付けました。そんなドラマがあるのも楽しさですね」。「gren」のジュエリーがエレガントなのにどこかワイルドなのは、そんな旅が隠し込まれているからだろう。

日差しの心地よいアトリエで、猫のように気ままに。

大きな窓から日差しが燦々と差し込み、その光をふんだんに浴びた植物が奔放に育っている。それが山田さんのアトリエだ。朝早く、まずフローリングに水を撒き、床掃除から始めるのが日課。メールやデスクワークなどひと仕事終えて、10時ごろにはちょっと眠くなり、日向ぼっこしながらウトウトすることも。また少し仕事をして、煮詰まるとキッチンで料理を始める。調理をしているうちにイメージが湧いてくるという。食事はほとんどが自炊で、知人が訪れれば、ぱぱっとフルコースでもてなすほどの料理の腕前。なんでも生み出せる魔法の手だ。
山田さんのクリエイションにとって欠かすことができないのが、仲良しの4姉妹と母。LINEメッセージでデザインのアドバイスを募り、出荷の時期にはふらりとアトリエに集まって配送を手伝ってくれる。そんなときのランチタイムはもちろんキッチンに誰かが立つ。達筆の長女がDM担当、美人の3女はポップアップストアで販売担当。「イタリアの家庭内手工業みたい」と山田さんは笑う。
自然を愛し、家族を愛し、自由を愛し、旅を愛する山田さんが、世界中で見つけてきた宝物。それが「gren」のジュエリーなのだ。

「gren」の頼もしいサポーター、4姉妹と姪っ子、そして母。

蚤の市では、古いトランクをついつい買ってしまう。

タンザニアでドライバーの親戚から買った、大きなタンザナイト。

友人がアトリエを訪れた時に振る舞った、イノシシ肉のパイ。

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  • ※掲載商品は定価表示となっております。

山田みどり Midori Yamada

神奈川県出身。文化学園大学(旧文化女子大学)、ヒコ・みづのジュエリーカレッジでデザインを学び、「グレース」でアクセサリーやバッグのデザインに携わる。2007年独立し「gren」を立ち上げる。ブランド名は名前の「みどり」からとった幼い頃の愛称。現在は年2回、コレクションのために海外に買い付けに出かける。

Photographer/yOU
Writer/YURICO YOSHINO