Fashion Talkwith Carlo Kurobe
カルロ黒部のお洒落対談 vol.3 ⟨後編⟩

テーマ

Mediterranean

ネイビーブレザーがアイビーを経て、ヨーロッパ的な着こなしに変化していく過程を考察した前編に続き、
後編では2018年春夏シーズンにおけるネイビーブレザーのトレンドを分析。
黒部和夫氏と鴨志田康人氏が、この潮流を紐解く。

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イタリア人の着こなしはコンサバティブ

黒部後編では、鴨志田さんが考えるイタリア的なネイビーブレザーとか、こういう着こなしがいいんじゃないか、といったことをお聞きしたいと思います。

鴨志田えっ、ないなあ(笑)。僕は基本的に、お好きにどうぞというタイプなんで、あまりファッションをHOW TOで語りたくはないんですよ。ただ、ネイビーブレザーの何がいいかというと、男の服ってある意味、制服化している部分があるじゃないですか。自己主張のためではなく、決められたものをきちんと着るみたいな……。そういうストイックさって、やっぱり男にしかないカッコよさだと思うんですよ。

黒部なるほどね。

鴨志田ちょっと乱暴な言い方ではありますけど、「しのごの言わず、これでも着ていろ」みたいなね(笑)。

黒部「男は黙ってリーバイスをはけ」みたいな感じでしょうか(笑)。考えてみれば、男の服って制服をルーツにしているものがほとんどですよね。ミリタリーウェアも、要は軍服ですからね。

鴨志田ネイビーブレザーもそういう制服の典型のひとつだと思うんです。学校やある種のクラブ・団体に所属している証だったりするわけですし。で、何かに属しているというのは、ある種の安心感があると思うんですよね。

黒部わかります。

鴨志田イタリア的な着こなしに関していうと、彼らは非常に保守的というか、コンサバティブで、身だしなみもルーツは英国に基づいているし、イタリアナイズされてはいますけど、ものの価値というのは源流にちゃんと重きを置いていますよね。いまじゃあ、アメリカ人にもそういう価値観はだいぶ失われてしまいましたし、ましてや英国人もたまたま先日ロイヤルファミリーのウェディングがありましたけど、ああいうなかにしか英国らしさを見出せない時代になっていますよね。

黒部そうですよね。

鴨志田そういう時代のなかで、イタリア人がいまいちばん英国らしい格好をしていると思うんですよ。日本だと雑誌なんかで、すごく曲解してイタリアのファッションを取り上げていますけど、本質を知っているイタリア人からすると、あれはすごく許せないって憤慨していますよ(笑)。「こんなイタリア人ばっかり紹介しやがって」とよく聞きますもん。これは生の声ですからね。「しょうがないんだよ」みたいな会話をよくするんですけど(笑)。

黒部確かに、ピッティ会場内のブースに、話題のブランドのオーナーやクリエイティブディレクターの方たちを訪ねると、ものすごく押し出しの強い格好をしていますよね(笑)。

鴨志田いや、僕が言っているのは、会場の中庭でスナップを撮られたがっている人たちのことです(苦笑)。

黒部ああ、あれはすごいですね。

鴨志田仕事もしないで、何をやっているんだって思うじゃないですか。

黒部なるほど、なるほど。

鴨志田イタリア的なネイビーブレザーの話に戻ると、真っ当な、正統な着こなし方をするという点でイタリア人のことは評価しています。色使いをヒネっているかというと決してそうではないですし。ブルーのシャツに、ちょうど今日の自分の格好はわりとイタリア人の着こなしに敬意を表した感じですが、自分も昔からこういう格好が好きでしたし……。廃れないよさってあるじゃないですか。

黒部今日、鴨志田さんと待ち合わせたときに、テーマであるネイビーブレザーを着てくれていて本当にありがたいなと思ったのと、生地がね、ホップサックで……。

鴨志田生地はドーメル社の「スポーテックス」(1922年に当時のスポーツ用生地として発表)です。英国を代表する素材ですよね。これはイタリアで贔屓にしているリヴェラーノ&リヴェラーノ(1948年にリヴェラーノ兄弟によってフィレンツェで創業したテーラー)で90年代初頭につくったネイビージャケットなんですよ。そのころ、イタリアにこういうクラシックなものが存在することすら知らなくて、こんなトラディショナルなものをつくり続けているテーラーやファクトリーがあるんだというのがものすごく新鮮だったんです。イタリアといえばアルマーニみたいな時代でしたから。で、こういうテーラーがあることを聞いて、実際に行ってみたらすごくよかったんですよ。いま見ても、アメリカっぽいか、英国っぽいかは人によって感じ方が違うかもしれないですけど、決してイタリアっぽい感じはしないでしょう?かなり前の話ですが、チューブのデザイナーの斎藤久夫さんにお会いしたときに「アメリカ製のジャケットを着ているの?」と聞かれて、逆にそれがうれしかったことをいまでも覚えています。

黒部全然、古く見えないですよね。

鴨志田ナポリ流のものとは違うかもしれないんですけど、なんにせよ、1930年代から50年代にかけてハリウッド黄金期のスターたちが着ていた衣装って、男のファッション史においていちばんカッコよかった、輝いていたころであって、完成されていた時代じゃないですか。あの当時、着ていたのと同じようなものを、いまだにつくっているイタリアのサルトがあることを知って、まずは驚いたんですよね。英国でもそういったテーラーはすでに少なくなってきていましたから。

黒部そんなときに、イタリアですばらしいサルトと出会ったわけですね。

鴨志田そうなんです。で、ネイビージャケットをつくってもらって、当時はナットボタンを付けていたんですが、数年前に自分のコレクション(カモシタ ユナイテッドアローズ)で使っているメタルボタンに替えました。Camoshitaの“C”を刻印したオリジナルなんですけど、このボタンはすごくいいボタンで、腕のいい職人さんが栃木にいるんです。アンティーク調に加工するのがすごくうまくて、いま本場の英国でもこれだけこだわったボタンをつくれるメーカーはなかなかないですよ。

黒部すごいですね。確かに、メタルボタンの問題ってありますよね。ボタンで印象がすごく変わりますから。僕も去年あたりからまたネイビーブレザーが気になり始めて、いいメタルボタンがないか探してみたんですよ。英国やアメリカ、スウェーデンのヴィンテージものを中心に掘っているんですが、なかなかないんですよね。海外のメタルボタンって軍服のボタンをルーツにしたものが多いので、プレスするときにすごい圧力でつくるらしいんです。だから、摩耗もしないし、角が立っていて、シャープな感じがしますよね。

鴨志田なるほど。

黒部オンワード樫山に入社して、いろんな付属品を扱うところと付き合って、ボタンなんかを見させてもらうと、わりと表面がやわな感じで、カクカクしてなくてね。

鴨志田ブレザーのボタンは大事ですよね。

黒部しかも、自分のイニシャルの“C”を使ったというのは、これはもう泣く子も黙っちゃいますよ(笑)。

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ネイビーブレザーは素材感が命

黒部正統派のブレザーって、本来は夏物でも表面にニュアンスがある生地じゃないとダメらしいんですよ。日本ではわりとトロピカルウールを使うじゃないですか。でも、海外の人からしてみると「あれはスーツにはいいけど、ブレザーにはツルツルすぎる」って言うんですよね。

鴨志田おっしゃる通りです。

黒部僕がオンワード樫山に入社当時、ラルフ ローレンのネイビーブレザーは、夏物もサマードスキンという綾織りで起毛した生地を使っていて「日本の夏だとヤケドしちゃうじゃんかよ(笑)」みたいなのがあったんですけど、薄手のトロピカルウールだと絶対に本国のアプルーバル(承認・許可)が下りないんですよ。「そういうのは垢抜けない」って。それで暑くても「ラルフはサマードスキンでございます」って我慢して着ていましたけどね(苦笑)。

鴨志田いいんじゃないですか。やっぱり、ツッパらなきゃダメですよ。いまはそれこそ化繊の上下がオッケーな時代でしょ。それはそれでいいんですよ、ギアとしては。でも、それだけだとだらしない格好になってしまいます。たまには暑くても我慢して、特にブレザーなんてペラペラの生地だとサマにならないですから、少し重みのある生地で表情のあるものを着ないとね。それを涼しい顔をして着こなすのがいいんですよ(笑)。

黒部それが、この連載を読んでくれている方たちへのメッセージですよね。

鴨志田ファッションって自分のアイデンティティを表すものじゃないですか。普遍的な格好が好きだったら、それはそれで自己主張になるからいいと思うんですよ。もっと自由な格好がしたかったらブレザーにTシャツを合わせればいいし、いろんなスタイルがあっていいと思うんです。いまっぽい着こなしを考える前に、やっぱり自分の着こなしに意志をもつということがいちばん大事ですよね。

黒部金言が出ましたね。では最後に、今日の鴨志田さんのコーディネートについて教えていただけますか?

鴨志田シャツはシャルベでタイはタイ ユア タイ、パンツはロータです。シャルベのシャツは、ユナイテッドアローズでずっと自分がオーダーしている襟型ですね。

黒部胸の下のところにイニシャルの刺繍が入っているんですね。パンツも2プリーツでベルトレスだし、すごくクラシックな趣がありますね。

鴨志田クラシック回帰=トレンドみたいになっていますからね。ロータのパンツは去年買ったんですが、ボリュームのあるシルエットがドレスクロージングのなかでも出てきています。いまボトムスって、カジュアル方面を含めてみんなゆるくなっているじゃないですか。自分もそういうのが好きだし、ピタピタのパンツはもうちょっと古いなって感じになってきているので……。本当はもう少し太くていいぐらいなんですけど、結果的にちょうどいいというか、レトロな雰囲気になっていますよね。イタリアのファクトリーブランドのすごさって、時代対応が素早いところなんですよね。

黒部靴は、ベルジャンシューズですね。

鴨志田これは最近、お気に入りのボードワン&ランゲのものです。いまベルジャンシューズがすごく流行っていて、自分自身もたくさんもっているんですけど、それに感化されて始めたロンドンのスリッパ屋さんの一足で、むちゃくちゃカッコいいのとベルジャンシューズって本来は室内履きとしてつくられるものなので外を歩くとダメージが大きいんですが、これはちゃんと外履き用としてつくっていて履き心地もすごくいいんです。

黒部おさらいになりますけど、ブレザーの素材感ってすごく重要ですよね。表情が乏しいと着こなしに奥行きが出ないというか……。あと、ぐっと色を抑えているのがすごいと思ったのと、シャツがブルーというところがイタリアを意識したのかなという気がしたんですが。

鴨志田いや、そんなことないです。国って関係ないと思うんですよ。お手本にするようなウェルドレッサーって、どこの国の人であっても似たような格好をしているじゃないですか。教科書的にいっても、ネイビージャケットにいちばん合うのはブルーのシャツというのは万国共通だと思います。特にイタリア人がそうかもしれませんが、それはイタリア人が昔ながらのスタイルというのを尊重して、続けているだけですよ。

黒部なるほど。今日は本当に勉強になりました。



鴨志田康人氏のパーソナルスタイル

ネイビーブレザーはフィレンツェのサルト、リヴェラーノ&リヴェラーノで仕立てたもので、生地はドーメル社の「スポーテックス」。自身のブランドのメタルボタンに付け替えた。シャツはシャルベ、タイはタイ ユア タイ、パンツはロータ、シューズはボードワン&ランゲ。クラシックでありながらも、鴨志田氏流のミックスコーディネートにより、オリジナリティーあふれる雰囲気を醸し出している。

対談のお相手

鈴木 晴生

ユナイテッドアローズ クリエイティブ・アドヴァイザー鴨志田 康人  かもした・やすと

1957年東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、82年にビームス入社。店舗スタッフを経て、企画・バイイングを担当。89年にビームスを退社後、ユナイテッドアローズ設立に参画。メンズクロージングの企画・バイイング、店舗衣装などのクリエイションのソフトを担う。2004年にユナイテッドアローズのクリエイティブディレクターに就任。07年には自身のブランド「Camoshita UNITED ARROWS」をスタートし、ピッティ・イマージネ・ウオモに出展。13年、同ブランドがアジア初の「ピッティ・イマージネ・ウオモ賞」を受賞。18年より現職。

カルロ黒部が惚れ込んだ
Mediterraneanのアイテムリスト

NEWYORKERのブレザー

今回の対談テーマにぴったり合うのがニューヨーカーのブレザーです。ベーシックなアイテムだからこそ、どんな風に着こなすかが腕の見せ所。鴨志田さんのアドバイスも参考にしていただき、自由なマインドで装うことを楽しんでください。

NEWYORKERのポロシャツ

ネイビーのブレザーにこんなワイドカラーのポロシャツを合わせるのもいいですね。台襟付きで襟まわりがしっかりしたつくりなので、きちんとした印象をキープできます。裾に施されたワンポイントが、さりげないアクセントになっています。

Perfectionのパンツ

ホワイトパンツとネイビーブレザーは相性が抜群の組み合わせ。爽やかな夏男になれます! これはウエストにゴムを用いたイージーフィットがポイント。コットンにポリウレタンを混紡した生地で、その伸縮性がリラックス感を高めてくれます。



  • ※掲載商品は定価表示となっております。
黒部 和夫

カルロ インターナショナル代表黒部 和夫 くろべ・かずお

1958年生まれ。83年にオンワード樫山に入社し、一貫してメンズ企画部門を歩む。メンズ商品開発室長、プレス責任者を務める一方、日本流行色協会、日本アパレル・ファッション産業協会、日本メンズファッション協会、繊維ファッション産学協議会の委員を歴任。2008年にはプルミエールヴィジョン(権威あるフランスの世界最大級の素材展示会)の「明日のメンズファッションを語る世界の4人」に選出される。14年に独立し、カルロ インターナショナルを設立。カルロ黒部の愛称で知られ、ファッションコンサルタント・評論家として多方面で活躍中。

photographer/ Takashi Nishizawa
writer/ Toshiaki Ishii
editorial director/ Kenji Washio

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